
[su_box title=”簡単なキャラクター紹介” box_color=”#2fa39f”]

乙女ちゃん。走ることが大好きなランナー。
陸上部で長距離をしている高校1年生。

美幸ちゃん。乙女ちゃんと同級生。
乙女ちゃんがいるという理由だけで陸上長距離を始めた初心者ランナー。

乙女ちゃんと美幸ちゃんを指導するコーチ(大学4年生)。
もとランナーで体育会系だが自称「インテリ」らしい。
[/su_box]
あらすじ
前回からの続きで練習で初めてのインターバルトレーニングに挑んだ美幸。最初のうちは余裕だったが後半になるとバテバテになりヒーヒー言わされるも、なんとか目標タイムと回数をこなすことができた。
そんな初めての経験を乗り越えて一服中の美幸だが、どうやらコーチの話が全然頭に入ってこなく、上の空であった…

あんだけヒーヒー言っとったけど、ちゃんとインターバルトレーニングできたやん!
やっぱあんたはやればできる子やで!よしよ~し

………

…ん?
美幸!話聞いとるか!

…ハッ!
すんまへん、ちょっとボーッしてました。

美幸?なんかいつもより顔赤なっとるで?
どっか具合悪いん?

う~ん、練習終わって結構経つけど、
なんかずーっと頭がぼーっとしとるみたいや…

(…あれ?これもしかしたら…アカンやつちゃうか?)

美幸、ちょっとついて来れるか?
今から体重測りに行くで!

…え?
なんですか急に?

私らはいつも練習前に体重計っとるやろ?
ひょっとしたら汗かきすぎて、体重が結構減っとるかもしれへん。

えっと…今日の練習前の体重は確かごじゅってん…

あ~も~分かりました~。
私一人で保健室で測ってきますからコーチは体重暴露せんといてください。

今の美幸、いつもみたいなコーチへのツッコミのキレがあらへん。
ホンマに具合悪いんやな…
~5分後~

コーチ…
練習前から1kg体重減っとりました。

…げ!1kgも!
体重の約2%も減っとんたんか。

体重の2%?
そんなに減ってたらまずいんですか?

2%やと脱水症状で、頭がボーッとしたり、吐き気がするラインなんやで。
ちゃんと水分と塩分補給して涼しい所で休まなアカンな。

ほならコーチ
私をはよ保健室まで連れてってください。

わかった!
じゃあおんぶで運ぶから、私の背中にはよ乗り!

え、おんぶ?
…まぁ、この際なんでもええわ…頼んます。

このノリやと、いつもなら拒絶するはずやのに素直になっとる!

おんぶしてわかるけど、ホンマに1kg減とるみたいやなぁ…
50kgのウエイトよりも若干軽いで!

コーチ…
やかましいです。

(女子の体重がウェイトトレと比較される状況って…)
というわけで、今回は運動の前後で発汗により体重が大きく減ってしまうと起きる脱水症状に関して説明していきます。
運動前の体重と比較して、どれだけ汗で体重が減っているかを知っておけば、水分と塩分補給が足りていないという事に気づいたり、実は危ない状態でしたという事にいち早く気が付けるようになります。
なお、今回登場しているように、トレーニングの前に体重を測っておくことで、運動後の体重と比較して自分の体からどれだけ汗が出ているのかを知ることができます。
運動で体重が減っているからダイエット成功!と喜んでいる状況が、実は単なる脱水症状で危険な状態でした…とならないように、減った体重分の水分と塩分をしっかり補給しておくようにしましょう。
[post_ad_1]
水分損失率と脱水症状について
普段の体重の数値と運動後に減った体重(汗)の数値を使って
「運動後に減った体重(汗) ÷ 普段の体重の数値」の値(%)を水分損失率と呼びます。
(例) 運動前の健康な状態の体重が50kgに対し、運動後に測定したら49kgになっていた場合の水分損失率の求め方。
- 50(元の体重) - 49(運動後の体重) = 1(失われた水分)
- 1(失われた水分) ÷ 50(元の体重) = 0.02 = 2% (水分損失率)
(※この計算は運動中にトイレで大小ともに出していないという設定です。)
元の体重からどれだけ汗で水分を喪失したかによって、体に現れる症状も異なってきます。
水分損失率ごとの症状
水分損失率 | 症状 |
1% | 大量の発汗、喉の渇き |
2% | 強い喉の渇き、めまい、吐き気、ぼんやりする、食欲減退、尿量の減少 |
3% | 発汗が止まる |
4% | 全身の脱力感、肌が紅潮する、イライラ、精神の不安定 |
6% | 手先の震え、ふらつき、頭痛、熱性困憊、体温の上昇、脈拍(心拍数)の上昇 |
8% | 幻覚、呼吸困難、めまい、 チアノーゼ(皮膚が青白くなる)、ろれつが回らない |
10-12% | 筋肉のけいれん、失神、不眠、循環不全、、腎機能不全、立っていられなくなる |
15-17% | 皮膚しなびる、嚥下困難(飲み込めなくなる)、視野が暗くなる、排尿痛、聴力喪失、皮膚感覚が鈍くなる、下が痺れる |
18% | 皮膚のひび割れ、尿生成の停止 |
20%以上 | 生命の危機、死亡 |
汗が少なければ軽度の症状が、大量にかけば重度の症状が出ます。重度の症状になるほど死亡するリスクも高まります。
仮に死亡する寸前で蘇生したとしても、後遺症が残ってしまうケースもあります。脱水症状を甘く見るのは禁物です。

ぼんやりしとったんは、水分損失率が大体2%やったからか…
案外気持ち的に大丈夫やと思ったけど危険なラインやったんやね…気いつけへんと。

案外汗かきすぎて、「なんか頭痛やめまいがする」「筋肉がピクピク動い取るなぁ…」みたいな経験をした人は多いと思う。もちろん、ちゃんと水分と塩分補給したら回復したという経験も同時にしているはずや。
せやけど、頭痛、めまい、筋肉のけいれんみたいなが出とる状態は、「実は危険な状態やった」と自覚してへんのが一番危ないんやで。
「この前熱中症で頭痛になったけど、今回の頭痛もきっと大丈夫やろ」って慢心は、事故の元や。死なへんためにも慢心はあかんで!絶対に!

どんな症状であれ脱水症状は舐めたらアカンのや!
暑さを舐めずに(塩)アメちゃん舐めるんやで!

………ん?
そのフレーズ、なんかCMで聞いたことあるような気が…
必ずしも水分損失率通りの症状が出るとは限りません
当然ですが、水分損失率による症状には個人差があり、水分損失率が少ないのにも関わらず、重篤な症状が出てしまうこともあります。
例えば、体重の1%しか水分が失われていないのにも、めまいや頭痛、手足のしびれといった体に目立った症状が出る。逆に体重の5%とも水分が失われているのに、発汗が止まることもなく、まだ汗が出続けているという具合です。
症状は年齢や運動歴、疲労度などの個人の体質的な影響、その日の気温や湿度といった環境の影響を受けてしまうものです。
この表にある水分損失率と症状の組み合わせは、目安として押さえておき、水分損失率の割に重篤化してないからといって慢心しないようにしましょう。
ちなみに、重篤な症状が出た場合は…
- 速やかに運動を中止して冷房の効いた屋内に移動する。
- 体(とくに大きな動脈の通る首筋、太ももの内側、股関節周辺など)を保冷剤や氷のうで冷却する。
- 水分と塩分補給を徐々に行う。
といった処置をするのが望ましいです。また、必要であれば専門の治療を受けたり、救急車を呼ぶなどの助けを呼ぶ事も視野に入れておきましょう。
[post_ad_2]
覚えておきたいスポーツ中の3つの脱水症状の兆候
以下に、脱水症状による兆候の中で「これはまずい状態」と自覚しておくべき兆候を3つまとめます。
サイン1 発汗の停止、尿量が減少する
運動していると最初のうちは汗がダラダラ出ていたのに、ある瞬間を境にスーっと汗が引いてじんわりとした汗すら出なくなってしまうという症状。
同時に、トイレに行ってもなかなか尿が出ない。出たと思ったらチョロっとだけで、その割に残尿感や不快感は残る、という症状です。(中の人体験済み(汗))
これは「これ以上水分が体外に出てしまうと生命維持に支障が出る(つまり「死」)」という体からのサインと考えましょう。
これ以上体から水分(汗と尿)が体から出ないために、体の熱が下がりにくくなってしまうので非常に危険な状態です。

ちなみにやけど、運動後におしっこの色がやけに濃い黄色になっている場合は、水分補給が足りてへんサインやで。
運動中や終わった後にちゃんと水分補給ができていれば、おしっこの色は薄く透明になる。
もちろん、水分だけでなく塩分も一緒に補給するようにするんやで。水分だけやったら、血液中の塩分濃度が下がって筋肉がけいれんしてしまうさかい気いつけや!
健康診断に検尿が含まれているように、おしっこは健康のバロメーターなんや。

(一応女性なのに「おしっこ」連発はちょっと…
けど、すんごい真面目な話やからちゃんと覚えとかんと!)

あとな、ビタミンB群のサプリメントを飲んだあとのおしっこも、かなり毒々しい蛍光色っぽい黄色(あるいはオレンジ色)になる。そして若干サプリの匂いもおしっこからしてくる。
これは主に脂肪の代謝に関わるビタミンB2(リボフラビン)の色が黄色なんが原因。
ちなみに、ビタミンB群は水溶性のビタミン。一般的なサプリのビタミンB2は、1日の摂取量を大幅に上回っとるから、余分なビタミンB2はおしっこに溶けて体外に捨てられてしまう。これは正常な体の反応やから心配いらへんで。
サイン2 手足の震え、筋肉のけいれんが起きる
汗の中には水分の他にもナトリウム(塩分、塩化ナトリウム)も含まれています。血液中の塩分濃度が下がると、意識していないのに手足が勝手に震える、指先や足先がピクピクと無意識のうちに動いてしまう(=筋肉のけいれん)ことがあります。
血中の塩分濃度が低くなることで筋肉が収縮を起こし、足がつる、こむら返りを引き起こしてその場から動けなくなってしまいます。
屋外でランニング中に足がつって動けなくなってしまうと、熱中症や脱水症状よりもまず交通事故に巻き込まれる場面が出てきてしまいます。
急に足がつって動けなくなったところに、自転車や自動車が突っ込んできて‥という事になってしまうと大変恐ろしいものです。
ですので運動中に筋肉に違和感を感じたら、一旦休息を入れる、運動を中止することも大切です。

普段問題なく走り回れているからこそ、足がつったとかで急に足が動かなくなったときは焦ってパニック状態になってしまうのはしゃーない。
公道や車がたくさん行き交う場所でそんなことが起きれば…交通事故に巻き込まれる可能性はもちろんあるやろねぇ…。

ランニング中の衝突事故って、以外と経験しているランナーは多いような気がします…。
[post_ad_3]
サイン3 頭がボーっとする、足元がふらつく
暑さで頭がボーっとする、足元がふらつく状態ではまともに運動をする事が難しくなります。スポーツの試合中にそんな状態のなってしまったら、転倒や接触により捻挫などの怪我のリスクも高まってしまいます。
水分損失率が高まるほど、体のキレがなくなる、集中力が落ちるといったパフォーマンスの低下を招くという事も明らかになっています。
スポーツ選手が熱中症になる前にこまめに水分と塩分補給をするのは、熱中症になるのを防ぐだけでなく、パフォーマンスの低下を未然に防ぐという目的もあるのです。

集中力はスポーツの試合で勝敗を決める重要な要素やね。
その集中力がなくなったら、ケアレスミスやエラーをして試合に負けるだけやなくて、不注意から誰かにぶつかったり、こけたりして怪我をする場面も当然起きやすくなる。
「なんかよーわからへんけど、ボーっとして集中できひんなぁ…」と感じたら、脱水症状になっている可能性を疑ってみるのも一つや。
これら3つサインは、わりとスポーツだけでなく風邪をひいたときや疲労が溜まっている時にたまに出てくる症状なので、脱水症状の中でもとくに油断しやすいサインともいえます。
逆に脱水症状で「排尿痛」「皮膚がしなびる」「嚥下困難(飲み込めなくなる)」のような、普段の生活でまず経験することが無い症状が出たら、ほぼ間違いなく「あ、これはヤバイな…」と異常事態であると自覚するので、油断する確率は低くなります。
[post_ad_4]
あとがき

さっきも言ったけど、「この前熱中症で頭痛になったけど、今回の頭痛もきっと大丈夫やろ」みたいな慣れからの油断、慢心ってホンマ怖いもんやね。
まぁ、せやけど人間「慣れ」があるから長距離走が速くなったり、重いもんが持ち上げらるようになれるという側面もある。
トレーニングで体に負荷をかける、そして体が負荷に慣れる、という繰り返しで持久力や筋力はアップしていくんや。
「慣れ」にはメリットもデメリットもあることを、よ~覚えておくんやで。

なんやかんや言って、コーチは意外とええこと言う人やねぇ…

美幸…あんたは鼻が慣れてるから気づいてへんと思うけど
結構汗臭いで…だいぶ顔色良くなったみたいやし、風邪ひいたらアカンからはよ着替えや。
参考書籍・熱中症におすすめのグッズなど
基本的なスポーツトレーニングに必要な知識がどれも詳しく載っています。スポーツ生理学を一通り勉強してきた中の人が選ぶ一押しの一冊。
そのまま食べるのではなく、水分100mlと一緒に食べることを推奨。熱中症だけでなく、電解質の崩れから来るこむら返り(足がつる事)の対策にもなります。
大塚製薬の看板スポーツドリンクのポカリスエット。飲む時にやや薄めの濃度に調整しやすいパウダー仕様。目安は水で標準の濃度から2~3倍薄めたものを、コップ一杯分(だいたい150~200ml)を15分ごとに飲むのが効果的。
アイシングで見たことがある人も多いと思うお馴染みのアレ。名前は「氷のう」「アイシングバッグ」。アイシングだけでなく、首や太ももなどの大きい動脈のあるところを冷やすと、血液から体を冷やすことができるので熱中症や脱水症状にも役立つ。
イラスト・ストーリー : シロカネ