

乙女ちゃん。走ることが大好きな陸上長距離専攻の高校1年生ランナー。
レース前に考えている事:「早くレース終わらへんかなぁ…」と結構ナーバス。

美幸ちゃん。乙女ちゃんと同級生の長距離初心者。
レース前に考えている事:「なんでみんな足をペチペチ叩いとるんやろう…?」と素朴な疑問。

乙女ちゃんと美幸ちゃんを指導するコーチ(大学4年生)。
現役時代のレース前に考えていたこと:「練習でやったことをちゃんとやろう」…と以外に現実的。
目次
あらすじ
ついに秋の新人戦の日がやってきた!乙女は女子3000M。美幸は女子1500Mにエントリー。
気温や天候にも恵まれ、この日のために練習を積み上げて来て2人ともばっちりのコンディションだが、レース直前になって二人とも緊張感が強まってきた模様。
無事に1次招集が済んだ2人に、レース直前の最後の仕上げとしてコーチがアドバイスを2人に送ることに…。

…あと30分でレース開始や…
緊張してきて喉から心臓が飛び出てきそう…

うぎゃぁ~~!
私の組、この前インターハイ出場した選手いるやん!
しかも隣の人は強豪校の選手やん!

3000Mは組の数が少ないから、強い選手と一緒の組になるんは陸上長距離あるあるやからねぇ。

なんか私以外の選手みんな早そうに見えてきた…
もしかして私だけ周回遅れになったりして…。

乙女…だいぶ緊張しとるみたいやなぁ…
そんな乙女見とったらこっちが冷静になってきたわ。

ちょいちょい乙女はん!
質問やけど、今の緊張感は100点満点中何点ぐらいやと思う?

え!
点数に直すんですか?

せや。今の緊張感が自分の中でMAXやったら100点
全然大したことやなかったら0点で採点するんや。

…う~ん、それやと今の緊張感は
だいたい70点ぐらいかなぁ。

へ~なんや結構余裕あるんやね?
てっきり90点ぐらい出すかと思ってたわ。

流石に90点はあらへんて…。

でも、自分の緊張感を具体的に数字に直すだけでも
結構落ち着いてきたような気もする。

実際に不安や緊張で頭がいっぱいな時は、点数に直して見ることで自分自身のメンタルを客観的に見ることができる。
そんで、今みたいに自分では緊張感を感じているようで、それなりに余裕がある状態やったと気づいたり、以外に大丈夫って気づくこともできるんや。
もちろん、今の自分の緊張感を数字に換算するだけでも、自分の気持ちを数字というモノサシを使って客観的に見れるようになるんやで。

あとコーチとこうやって話しているだけで
なんか緊張感が更に3点ぐらい減った気がします!

数値に治すと、今みたいに「3点減った」っていうのも分かるから
メンタルをコントロールするのに役立つ!ええことに気づけたやん!

乙女!そろそろレースが始まるみたいやで!
3000Mは1500Mの前にあるから、はよ行かんと遅れるで!

では、コーチ!
行ってきます!

おう!無い胸張って楽しんでくるんやで!対して

あ、え~と…とりあえず楽しんできます!

(コーチはレース前でも余計な一言が多いなぁ…)

(コーチにあんな応援されたら、流石に平常心取り戻すなぁ…
心の中でちょっとだけ感謝しとこ)

(そしてレース終わったら一言文句言いに行こ(怒))
…ということで、今回は大会・試合前に向けての過ごし方についてまとめていきます。
前回の「大会・試合前の過ごし方 メンタルの整え方について」同様にこのページでは陸上競技(主に長距離走)やマラソンをメインにした過ごし方を紹介していますが、短距離や投擲、跳躍などの陸上競技の他の種目、野球やサッカーなどの他のスポーツの試合前の過ごし方としても参考になるようにまとめています。
大会・試合当日の過ごし方
ウォーミングアップについて
大会前のウォーミングアップは他校の選手と同じグラウンドやサブトラックでやることが大半なので、強豪校の選手や自分よりも強そうな選手を見かけると、つい気後れしたり、不安や緊張感が強くなりがちです。
自分よりも格上の選手と同じ場所でウォーミングアップをするとなると、どうしても自分の方が心理的に格下だと思いこんでしまいやすく、萎縮して積極性が失われることがよくあります。
そうした状況を避けるためになるべく早い時間に会場入りして、強い選手が以内うちにウォーミングアップを行ったり、前日からウォーミングアップの内容を決めておき、当日は周りに左右されず予め決めておいたウォーミングアップを淡々とこなすことに集中するようにしましょう。

ウォーミングアップで効果的なストレッチは、ゆっくり時間をかけて筋肉を伸ばす静的ストレッチよりも、時間は短く体を動かしながら行う動的ストレッチの方がパフォーマンスアップには効果的。
動的ストレッチは体を動かしながら行う「ラジオ体操」「スプリントドリル」がいい例。静的ストレッチは筋肉を伸ばした状態で静止する「前屈」「開脚」がいい例やね。
もちろん、静的ストレッチも怪我をウォーミングアップに取り入れてもええけど、その場合は1回につき30秒以内にとどめておくようにするんやで。
招集(点呼)について
陸上競技の場合、出場する選手の点呼をとる「招集」が行われ、ここで確認が取れないと大会に出場することはできません。また、招集の時間を過ぎてしまったら大会に出場することはできません。
招集場所には、同じ種目に出場する選手が多数集まっており、なんともいえないピリピリした空気が漂っていたり、自分よりも格上の選手を見かけて動揺しやすい場面でもあります。
動揺しないためには、ウォーミングアップ同様に早めに招集場所に着いて、その場の空気に慣れて置く、招集場所に対するアウェー感を無くすというやり方で乗り越えるといいう方法があります。
また、招集場所でも自分が今できること(ゼッケン番号やスパイクピンの確認など)に集中して、周囲の選手に対するプレッシャーを過度に受け取らないようにしましょう。

陸上競技は個人種目やから練習するときは一人という人も多いせいか、ウォーミングアップや招集のように他の選手が一堂に会する場面に慣れていないという事はよくあるね。(…コミュ障にとってもつらい場面やねぇ…)
せやけど、格上で強い選手に囲まれているからといってビビるのではなく、まずは自分のやるべき大会前の準備やルーティンに集中して、平常心を保てるようにするんやで。
1日何度も出場する場合、食事は少量且つ小分けに
種目やスポーツによっては、1日のうちに予選、準決勝、決勝の3回出場する、午前と午後の2回に分けて試合が行われというスケジュールもあります。
その場合、試合の合間に昼食や間食をすることになりますが、緊張感から食欲が湧かないということも少なくありません。
とはいえ何も食べないと空腹で集中力が下がってしまうので、なるべく消化に負担がかからず炭水化物主体の食べ物、例えばエネルギーゼリー、うどん、バナナ、あんぱんなどを軽い栄養補給のような感覚で食べるよういしましょう。
また、夏場や汗をかきやすいスポーツの場合は、食事と一緒に水分と塩分補給もこまめにするようにしましょう。

お腹がいっぱいの状態で走るとどうしても影響が出てしまうもんね…
単刀直入にいえば苦しくなって吐く原因になるからね、マジで。
せやから残さず食べることにこだわらず、本番に影響が出ない範囲でちょびっと栄養補給するんでもOKと考えるようにするんが効果的やね。
スポンサーリンク
本番に強くなるためにできること
自分が緊張したときの状態を知って対処法を立てる
緊張したときの自分の体やメンタルに起きる特徴を調べておき、その症状に対して対処法を複数立てるという方法です。
たとえば、緊張感からネガティブ思考が止まらなくなる状態になる場合は、
- 深呼吸をする。
- 人という字を手に書いて飲み込む。
- 靴ひもを結び直して気分を落ち着ける。
- コーチや友達と会話をする。
- 目線を下ではなく上に向けるようにする。
- 笑顔を心がける。
- 足をペチペチ叩く。
と複数の対策を立てておき、ネガティブ思考が出はじめたらスムーズに対処するという具合です。
対処法はノートやメモ書きでまとめる、大会前に確認しやすい形にしておくのでもいいでしょう。

対処法はなるべく多く上げることで選べる選択肢が増えて効果的。
多すぎてどの対処法からすればいいか迷う場合は、順番をつけてその通りに動くようにするのでもええね。

順番通りにある動作を次々こなして平常心になるのって、プロスポーツ選手がやってるルーティンみたいっすね。

せやね。ある動作をすることで気持ちを落ち着けたり、集中力を高めるという点では対処法を黙々とこなすのもルーティンをやるのも根底は同じや。
緊張感を数字で表してみる
あらすじのところでも登場した、「自分の緊張感を数字にしてみる」というメンタルコントロール法は、緊張という漠然とした気持ちを数字に換算して、今の自分がどれだけ緊張しているかを客観的に見ることができます。
一口に「緊張している!」と言っても、その緊張感が100点満点中何点なのか数字にしてみると、以外と自分は緊張していなかったり、数字に直す過程で緊張している自分を客観的に見て平常心を取り戻すことができます。
また、数字に直したあとはその記録を練習日誌に残すようにして、過去の大会で自分がどれだけ緊張していたかの点数の推移を確認してみて、どの程度の緊張なら自分はいいパフォーマンスが出せるのかを調べる材料としても使うことができます。

緊張感はありすぎると困るけど、逆に無さすぎると集中力が下がってしまう。
緊張感は決して怖いもんやなくて、うまくコントロールできたら味方になるっちゅうわけや。
足や体を叩くのはほどほどに
陸上長距離やマラソンでは、スタート前に自分の太ももをペチペチ叩く選手が多くいます。
これはあえて自分の足を叩いて痛みという外的刺激を感じること、緊張感やプレッシャーを切り離したいという心理からくる行動と考えることができます。
ただし、当然ながらやりすぎると叩いた箇所が赤く腫れたり、爪で肌を引っ掻いて傷が残ることがあります。叩くにしてもほどほどにするようにしましょう。
また、叩く以外の方法でも平常心を取り戻す方法を、緊張時の対処法として複数見つけておくようにしましょう。

緊張や不安を解消するためにあえて体を傷付けるってのは、見方を変えれば自分で手首を切り付けるリストカットに代表される「自傷行為」の一種とも考えられるよね…。
もちろんそんな深刻な意味やなくて「周りがやっていから自分も叩かなあかん!」と、雰囲気でやっとる人が大半やと思うけどね…。

「俺たちは雰囲気で太ももを叩いてる!」っていうわけですか。
言われて見れば当てはまる気が…。

まぁ、雰囲気に飲まれていると感じたら、深呼吸なり一瞬目を閉じるなり、数秒呼吸を止めるなりして落ちつきを取り戻す。自分なりの調子が狂わないようなルールを作っていくんがええね。
(ただし大声を出すのは周囲に迷惑かかるからダメ!ゼッタイ!)
スポンサーリンク
あとがき

コーチ!さっきのスタート直前に
「ない胸張って」てのは流石に変ですよ。

まぁでも、あの応援のおかげでだいぶ冷静になれました。
「無い胸張って」の応援で自己ベスト出せたみたいなもんですし
そのことは一応感謝しています…

すんまへん…
私でも流石にあれは言いすぎたかなぁ~って…
レース中ずっと反省してました、マジで。

もう…仕方のないコーチですね。
ちゃんと反省してるんやったら、今回だけは許します。

(乙女のチョロさに更に磨きがかかっとる…
そしてなにげにツンデレ属性まで追加か…。)

それはそうと、レースを走っての感想はどうでしたか?乙女選手?

うーんとそうですね、序盤のうちは隣の強豪校の選手がだいたい自分のレベルと同じやったんで、その選手にピッタリついて行ったら、1000,2000のラップタイムもだいたい目標どおりでした。
ラストは結構余裕があったので、残り400M手前で一気にギアチェンジして自己ベストを出したって感じです!

乙女選手、1年生ながらも最後の追い上げで5人抜く快挙。
自己ベストを15秒更新し、記録は10分38秒26でした!

なんでインタビューノリで会話しとるんすか?

こうやってインタビューされる事が
ひょっとしたらこれから先にあるかもしれへんやろ?

ホンマにですかぁ?

世の中何が起こるか分からもんやで?
ひょっとしたら全国に行けるほどのレベルになるかもしれへんやろ?
それに、自分で自分のレースを語って振り返る経験は、次の大会につながるヒントが見つかることもあるんや(…ここ、ちゃんと覚えておきや!)

生放送やったら、インタビューも失敗できひんから
確かに今のうちにしっかり練習しとくのは効果アリですね!

(乙女、完全に妄想の世界にのめり込んどるなぁ…)

…ということで、今度は美幸選手!
今回の1500Mの感想はどうでしたか?

う~んと、まぁなんというか練習できたことをやった感じですねぇ…。
1人思いっきりスタートダッシュをかけて行ったけど、あのペースについて言ったらオーバーペースになるって感じたから、集団から離れるけどまずは自分のペースで走る。
ほんで1000M過ぎたあたりでだいぶ足に乳酸が溜まってましたけど、とにかく最後まで下向かへんできっちり走り抜くイメージどおりにゴールしたって感じです。

美幸選手、初心者らしく自分のペースを守ることに集中して
自己ベストを10秒更新。記録5分28秒58でした!

…という事で今回は二人共無事に自己ベスト更新という大検討!
おめでとさん!

あの~コーチ!
そろそろ私にクールダウンに行きたいんですけど!

ちょ待ってくれ!
最後に写真だけ撮らせてれ!
お願いや!

写真ですか…
分かりましたから…早く終わらせてくださいね。
参考書籍
イラスト・ストーリー : シロカネ