試合・大会前の調整 ピーキングと大会に向けてのコンディションの整え方について


 

 

簡単なキャラクター紹介
"乙女ちゃん
乙女ちゃん

乙女ちゃん。走ることが大好きな陸上長距離専攻の高校1年生ランナー。

試合が近づくにつれてわりと不安を感じる、繊細な一面もあるお年頃の女の子。

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

美幸ちゃん。乙女ちゃんと同級生。

先日買ったスパイクは結構お気に入りのご様子。本人曰く「高い買い物やったさかい、大会は走力も運も付いてくるはず」とのこと。

"詩織コーチ
詩織コーチ

乙女ちゃんと美幸ちゃんを指導するコーチ(大学4年生)。

大会は自分を魅せる場所が現役時代のモットー(死語)だったらしい。

 

 

 

あらすじ

秋の新人戦が近づき、大会に向けての緊張感が高まってきた。

乙女は美幸よりも多く大会に出た経験こそあるが、まだまだ大会の雰囲気に慣れている…というわけではなかった。

大会の日が近づくにつれて、乙女は無意識のうちに緊張感から調子が出なく、ちょっぴり凹んでいるご様子…

 

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

なぁ、なぁ乙女!

やっぱこの前買ったスパイクええ感じや!

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

そうなんや…

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

背中に羽が生えたみたいな感じっていうか

足が軽なった感が強いで!

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

…ふ~ん

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

どしたん、乙女?

なんか今日調子悪いみたいやけど、生理なん?

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

美幸さぁ…なんか最近コーチに毒されてきてへん?

ちょっとデリカシーなさすぎやで?

(※参考「女子スポーツ選手と生理不順と無月経 女子部員を指導するなら知っておきたいお話」よりコーチの過去の失言…もとい発言。)

 

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

あら、いけない。

流石に女子同士でも、そういうデリケートな話題は控えなきゃダメざますね…オホホホ。

"詩織コーチ
詩織コーチ

(反面教師として役立ってるだけでも、私の存在はプラスになっとる証拠かな…)

"詩織コーチ
詩織コーチ

それはそうと、乙女。

今日の練習は随分調子が良くなかったみたいやね。どっか具合悪いんか?

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

具合悪いわけやないですけど、来週に大会があるのになんか練習の質が今ひとつというか…

こう、もっと追い込まんとあかん気がして、ずっとモヤモヤしとるんです。

"詩織コーチ
詩織コーチ

色々考え事しとって、ずっと緊張しとる感じなんか?

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

だいたいそんな感じですね…。

もちろん、大会前だから無茶な練習をしたら響くのはわかるんですけど

本当にこのまま練習をしても記録が出るのかどうか不安で…。

"詩織コーチ
詩織コーチ

頭では無理に練習したらあかんってわかっとるけど

体ではその事が理解できてへんて感じか?

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

そうですね…。

"詩織コーチ
詩織コーチ

大会の日が近づくと不安になるのは、運動部ならあるあるやからねぇ。

"詩織コーチ
詩織コーチ

でも、ここでぐっと堪えて大会に向けて体調を整えていくのも練習の一つ。

いわゆる「ピーキング」やね。

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

ピーキング?

…体調のピークを大会に合わせるってことですか?

"詩織コーチ
詩織コーチ

わかりやすく言うとそうなるね。

試合に向けてピークを合わすからピーキング。

"詩織コーチ
詩織コーチ

さ!一緒に復唱!

レッツ!ス、ピーキング!(Let’s speaking!)

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

………え?

コーチどうかされたんですか?

"詩織コーチ
詩織コーチ

……すまん

今のは聞かんかった事にしていてくれ…頼むから…

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

あ、はい。

"詩織コーチ
詩織コーチ

(…緊張ほぐそうとした渾身の英語の洒落が効いてへん…

こりゃ思ったより重症かもな…)

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

(乙女の場合、緊張時しとる時にダジャレは効果なし。

コーチから学ぶことがまた見つかった…感謝せなあかんな。)

 

 

…はい、というわけで、今回は大会や試合に向けて練習量を調整しコンディションを整える「ピーキング」についてまとめいきます。

 

 

ピーキングとは

ピーキングとは大会や試合の日に向けて、普段のトレーニングによる疲労を取り除きベストなコンディションで挑めるように練習内容を調整していく事を指す言葉です。

英語の「ピーク(peak:頂点、頂上)」が元になっています。

ピーキングの期間は人それぞれ長さは異なるものですが、期間は違えど大会の日に向けて体調を整えるという点は同じです。

一般的に陸上競技の場合だとピーキングという言葉の代わりに「調整」という言葉が使われていることが多く、文字通り練習量を調整するという意味でも使われたり、大会に向けて軽く刺激を入れるために別のレースに出場する、という意味でも使われる事があります。

 

"詩織コーチ
詩織コーチ

ニュースやとピーキングよりも「○○選手は来週行われるフルマラソンに向けて、調整のために○○ハーフマラソンに出場」という風に「調整」という言葉が使われる事の方が多い。

ピーキングと聞くと馴染みのない言葉やけど、調整といえば馴染みがあるから理解しやすいと思うで。

"詩織コーチ
詩織コーチ

ちなみに、ピーキングと一緒に使われる言葉で「テーパリング」という言葉もある。

英語の「Taper(先細る)」が元になってて、こっちは練習量や強度を減らす意味で使われる言葉やね。

"詩織コーチ
詩織コーチ

(…まぁ、テーパリングはスポーツトレーニングではなく経済用語・株式用語として使われる方が多い言葉なんやけど…)

 

 

 

大会に向けてのコンディションの整え方

大会に向けて万全の体調で挑めるようにするには、当然ながら普段と同じトレーニングでは疲労を残したままだと大会に影響が出てしまう事があります。

従って、練習量を減らしたり、練習内容を変えていく必要があります。

 

 

大会直前はスピード練習やウェイトトレのような高負荷の練習は控える

陸上長距離の場合、インターバルトレーニングレペティショントレーニングのようなスピードトレーニング、筋肉を鍛えるためのウェイトトレーニングをした次の日に大会に出場しても、疲労や筋肉痛で思うように走れなくなるのは想像に難くないことです。

超回復のところで説明したように、激しいトレーニングのあとは疲労により体のパフォーマンスが下がる。そして回復してトレーニング前よりも成長するのには48~72時間ほどの時間がかかります。

ちゃんと回復しきっていない状態で大会に出ても記録は出にくいのは無理もありません。

適切な休息を挟みつつ練習による疲労を貯めないように、大会が近づいたら高負荷なトレーニングは控えて、疲労の少ない状態で出場できるようにするのが重要です。

 

"詩織コーチ
詩織コーチ

試合前は疲労を残さないために、高負荷トレーニングを避けるのはなんとなくわかってる人は多いと思うけど、超回復で登場したグラフをもう一度見返してみるで。

"詩織コーチ
詩織コーチ

例えば、試合前なのに激しいトレーニングをして「第1段階(疲労)」や「第2段階(回復)」のようなトレーニング前より低いパフォーマンスしか出ない状態で出場するのは避けるべき、というのはわかるはずやね。

少なくともトレーニング前と同じ状態、あるいはそれ以上のパフォーマンスが発揮できる状態で試合に臨むように練習内容をコントロールしていくのが理想やね。

 

 

もしもスピードを確認したい場合は距離、回数は少なくする。

大会に向けてスピードトレーニングを控えるのが重要とは言いましたが、そうは言っても全くスピードを上げて走らないまま大会を迎えるというのは非常に不安になるものです。

あまりにもスピードを出して走っていないせいで、いざ大会になった時に自分のペースが把握できず、想定よりも遅すぎるペースで走っていたり、逆に早すぎるペースで走ってしまうのは避けたいものですね。

そうならないためには、大会前は全くスピード練習をするのではなく、あくまでも確認のためとしていつもより本数や距離を少なくしてスピードを上げた走りを練習メニューに加えて、感覚を忘れないようにするのが効果的です。

例えば普段のインターバル走が「1000×5本」なら「1000×1本」「400m×2本」に内容を変えて、練習量は下げつつ、試合に向けて疲労を残さないように工夫するのが効果的。

本数が少ない分、1本あたりは十分集中して行う。大会の雰囲気を想像してイメトレも兼ねて走ったり、自分のスタート時のペースをしっかり確認する目的で走るというように、普段のスピードトレーニングではあまり意識しない事を意識するのもおすすめです。

 

"詩織コーチ
詩織コーチ

短い距離を全速力の7~8割程度の勢いで走るんは「流し」または「WS(ウィンドスプリント)」と言われとる。普段の練習から大会前の練習に至るまで多くのランナーがやっている練習の一つ。

スピード感覚を残しつつ疲労を抜くという意味では、大会前の練習で流しをするのはうってつけやね。

 

 

ピーキングにかかる時間は個人差がある

トレーニングによる疲労がしっかりと取れるのには、年齢、運動歴、体質などの個人差があります。

チームスポーツの場合、試合前でも全体練習により、自分の回復ペースにあった練習ができずに疲労を貯めた状態で試合に出てしまう事があります。

技術練習などでどうしても全体練習を行う場面が必要になる事もあるとは思いますが、ある程度個人の回復ペースに合わせられるような工夫を入れるようにしましょう。

 

"詩織コーチ
詩織コーチ

個々人の能力に最適なトレーニングが効率を高める。トレーニングの7原則「個別性の原則」やね。もちろん、これはピーキングでも一緒やね。

ちなみに、どうしても全体練習は外せないという場合は、それ以外の練習で個々人が練習内容を調節できるようにする、というやり方もあるんやで。

 

 

食事や睡眠の面でも体調を整える

ピーキングや調整は練習に限った事ではありません。普段の食事や睡眠といった練習以外のことも含みます。

食事面では試合前は消化に時間のかかる油を使った料理(揚げ物など)や食物繊維の多い料理を食べるのではなく、うどんやご飯、パスタなどの炭水化物を中心にした食事を心がける。

睡眠面では、夜更かしをしない、睡眠時間を削らない、寝る前にカフェインが含まれている飲み物(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)は控えるようにして、質の高い睡眠を取ることが効果的です。

 

"詩織コーチ
詩織コーチ

昔ながらの体育会系やと「敵に勝つ」っちゅう願掛けで試合前にトンカツを食べるなんて事があるよね。

ただし、実際は試合前の油物は消化に時間がかかるし、筋肉のエネルギー源になる炭水化物(グリコーゲン)が少なく非効率という悲しいオチがあるんやで。

"詩織コーチ
詩織コーチ

試合前は肉よりお米!

「お米食べろ!」ってわけやね。

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

松岡○造って結構役に立つ事言ってるんやな……

 

 

あとがき

"詩織コーチ
詩織コーチ

疲労回復のために練習内容を変えるのは大事なこと。もちろん、回復のペースには個人差があるのはしゃーないから、自分にあった期間でするのが大切なんや。

"詩織コーチ
詩織コーチ

あと短い時間で疲労を回復する事が良いことだと考えるのはあかんね。

「回復が早い=善、回復が遅い=悪」というような極端な考え方をすると、余計なストレスを抱えたり回復スピードが遅い人にプレッシャーを与えてしまうことになる。

個人差があるのは自然なこと。その個人差を無視するのではなく、活用できるような柔軟性を練習にも取り入れるのは大事なことや!

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

考え方でも体でも疲労を溜めないためには、柔軟性ってホンマに大事ですよね…

"詩織コーチ
詩織コーチ

うまいこと言うけど、まさにその通りやなぁ…(座布団1枚あげたいわ。)

"詩織コーチ
詩織コーチ

ちなみに自分だけのコンディションの整え方を分析するには、練習日誌を付けるのがシンプルやけどわかりやすい方法やね。

昔の自分はどんな調整をしていたか、その結果はどうやったを日誌で客観的に分析すれば、自分の体調や考え方のクセをよく知ることもできる。

日記や一言メモみたいな感じで、その日の気分を書いておくことで、自分の気持ちの整理して、メンタル面も整える効果もあるんやで。

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

でも、昔の自分の日記を見返るのってなんか恥ずかしくないですか?

"詩織コーチ
詩織コーチ

まぁ、黒歴史を振り返るみたいでうんざりする事はあるよねぇ…。

"詩織コーチ
詩織コーチ

せやけど、そういった記録も私みたいなコーチや監督に見せることで、練習に役立つヒントが見つかるかもしれへん。

もちろん、他の部員に見せることで悩みを共有したり、誰かが困ったときの解決法を知る手段としても役立つ事もあるんや。

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

他人に見せるのが前提となると意識して書かなアカンから、文章力も鍛えられそう。

"詩織コーチ
詩織コーチ

せやね。

自分の気持ちを整理したり、相手に伝わるように言葉を選んでいくのはコミュニケーション能力の基礎中の基礎。その心がけは立派なもんやね。

"詩織コーチ
詩織コーチ

…ということで

ちゃんと日誌を書いて私のところに持ってきてや!

相談ならちゃんと乗ったるで!

"美幸ちゃん
美幸ちゃん

こうしてコーチはまた新たな黒歴史を性懲りもなく作っていのであった(棒)

"乙女ちゃん
乙女ちゃん

黒歴史があるからこそ今のコーチがあると考えたら

黒歴史も決して悪いもんではないんやろね。

"詩織コーチ
詩織コーチ

(よし、今回はちょっとはコーチらしい事言えたみたいやな。

自分で自分を褒めよう…これ結構大事!)

 

 

 

…スパッツ膝枕…これは新天地(ゴクリ)

 

 

参考書籍


イラスト・ストーリー : シロカネ