
[su_box title=”簡単なキャラクター紹介” box_color=”#2fa39f”]

乙女ちゃん。走ることが大好きなランナー。陸上部で高校1年生。
体脂肪率が低くいい感じに引き締まっているのがちょっとした自慢らしい。

美幸ちゃん。乙女ちゃんと同級生の初心者陸上長距離ランナー。
見た目以上に体重が重いらしいが、本人は「骨太の家系やから」と説明している。

乙女ちゃんと美幸ちゃんを指導するコーチ(大学4年生)。
自称「脱いだら(筋肉が)すごい」らしいが、人前で肌を見せることが無いので、その真偽は定かではない。
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あらすじ
陸上部で定期的に行われる詩織コーチ主導の身体計測の日がやってきた。
乙女と美幸は、コーチによる更なる質の高いトレーニングのデータを得るという目的のため、身長、体重、体脂肪率、そしてスリーサイズに至るまで、ありとあらゆる体の数値をみっちりねっとり収集されるのであった。

ほほ~ん…美幸の体脂肪率は
…まぁまぁ、標準的ってとこやね

でも、まだ25%超えとるから、もうちょっと減らしたいんですけど…

もともと30%あった時から比べたら細なっとるで?
あんま、体脂肪を一気に減らすと体に毒やで

美幸には美幸のペースがあるから、ゆっくり減らせばええんちゃうんかな?

乙女はええよね~
体脂肪15パー切っとるさかい、私の悩みがわからんで!

なんなんその言い方…
ちょっとイライラしすぎちゃう?

乙女にはわかへんやろ。
痩せるために、前から毎食炭水化物抜いたり、野菜たくさん食べたりして、カロリー抑えてんねんで。

美幸…あんた、今日計測するからって
勝手にダイエットしたんか?

え、そうですけど?

あんたな、もしかして無茶な食事制限になっとらへんか?

む、無茶ちゃいますよ…

ほなら昨日の晩御飯なんやった?

…ヨーグルト1個や

そんだけ?

せやで、私やって頑張るときは頑張るんや!

あのなぁ…美幸。
そんな食事しとったらしまいに体壊すで…ホンマに

ちゃんと痩せたら、元の食事に戻すつもりやったんですけど…

あのな美幸、無茶な食事制限を続けとるとなストレスからドカ食いしたり、食欲がなくなってしまう事があるんや?
摂食障害って言う立派なメンタルの病気やで。

たしか、摂食障害ってモデルの人に多い病気でしたっけ?

せやね。摂食障害はダイエットにのめり込む、強く痩せたいと思う女性に多い病気やね。
もちろんスポーツしとる女子も例外やあらへん。とくに中高生の時期に摂食障害になると、大人になってからも骨や体に影響が出てしまうことがある。

せやから美幸。ちゃんと食べるもん食べへんとアカンねんで。

…すいません。
せやけど、摂食障害って言葉、初めて知りました。具体的に摂食障害について教えてくださいコーチ。

そうか!じゃあ、今からみっちり教えたるさかい、安心しいや!

…いや、そこは普通でお願いします。

(コーチにみっちり教わったら、げっそりしそうやな…
あれ、もしかして私が体脂肪低いのって…)
ということで、今回は女性のアスリートに結構多い、摂食障害に関してです。
先日、世界陸上ヘルシンキ大会(2005年)の女子マラソンなどで活躍した過去を持つ原裕美子選手が、万引きで逮捕されたというニュースが流れました。
そのニュースからまもなくして、現役時代に摂食障害を患わっていた事が判明。普段から体を重くしてはいけないというストレスから、過食や嘔吐を繰り返していたという事が明らかになりました。
摂食障害と言えば世界仰天ニュースなどでメディアで時々取り上げられて、それなりに認知されている女性に多いメンタルの病気ですが、スポーツ選手の場合となるとまだまだ認知されていないように感じます。
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女子スポーツ選手の摂食障害について
女子スポーツ選手を指導するときに「体重」に気を配るという場面はよくあります。
しかし、体重を気にするあまり、過度な食事制限を行って食事をせずにガリガリになるまで痩せてしまう。
逆にイライラや不安を抱え込んでストレスの解消が食べることに向いてしまい、苦しくなるまで食べ過ぎてしまうという行動をとってしまうことがあります。
このような、食事に関する異常な行動を摂食障害と呼び、大きく分けて食事を拒否する拒食と食べ過ぎるてしまう過食の2通りに分けられます。
拒食症 (神経性無食欲症)
その名の通り食事を拒む、痩せすぎているのに食べないという食生活をする精神の病気の一種。
また食事をしても非常に少量、あるいはこんにゃくやキノコ類などの、低カロリーなものばかりを食べて、意図的にカロリーを避けている行動も拒食症の一種です。
誰から見ても細身で痩せているのに、本人は「自分はまだまだデブ」「もっとダイエットをしなきゃダメ」と思い込んでいるのも特徴の一つです。
過食症 (神経性大食症)
拒食症とは逆に、苦しくなるまで食べ過ぎてしまう精神の病気の一種。
「拒食症と違って食べているから大丈夫」というわけではなく、ストレスや不安の解消が異常な食事行動として現れています。拒食症から過食症に移行したケースも多く存在しています。
なお、過食症の場合食べ過ぎた分太ってしまうのを避けるために、あえて嘔吐して体重を戻す「過食嘔吐」を伴う事が多くあります。
嘔吐の他にも、下剤、利尿剤などの薬、過度の運動などを行い、増えた体重を元に戻そうとすることもあります。
また、過食する場合も「吐きやすい食べ物」や「吐きやすい食べ順」を意識しており、食事に対する歪んだ見方をしています。

摂食障害は10~20代の若い女性に圧倒的に多いというデータがある。
とくに中高生のような成長期で体が大きく成長する時期に摂食障害になると、その後の人生に支障が出ることもある。
摂食障害は、ストレスや性格、環境、性別、家族・友人・部活の人間関係などのたくさんの原因が複雑に絡んでいるメンタルの病気なんや。

ちなみに、食べたものを飲み込まずに噛むだけ噛んで吐き出すのを「チューイング」と呼ぶんや。
ガムを噛むみたい味だけ味わって食べた物はポイっ、ていう拒食とも過食とも違う食事の仕方が特徴的や。
チューイングの根底にあるのは、「痩せたい」「太りたくない」「食べることへの嫌悪感や罪悪感」「周囲からの期待・プレッシャー」のような拒食や過食にもみられる心理なんやで。
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摂食障害がもたらす心身への影響
肉体面への影響
拒食症なら痩せすぎてしまい脂肪だけでなく筋肉までもやせ細り、スタミナ切れや筋力の低下を引き起こします。
いくら体重が減ったとは言え運動に必要な筋肉まで減らしては、いいパフォーマンスがでなくなってしまいます。
女性の場合、痩せすぎると先にも書いたようにホルモンバランスが崩れて、生理不順や無月経になる、骨粗鬆症や骨がもろくなり慢性的な疲労骨折になることもあります。
また、痩せすぎて体脂肪が極端に減ることで、寒さに弱くなり風邪をひきやすくなる、低体温やむくみ、味覚の異常を引き起こす事もあります。
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メンタル面への影響
摂食障害に陥ってしまうと、スポーツをする上で重要なメンタルにも影響が出ます。
とくに顕著なのは「食べることへの罪悪感」。人間が生きていく上では食事をして栄養を取ることは欠かせません。
その食事に対して罪悪感を感じれば大きなストレスの原因になり、食事に対する以上な考えや行動を引き起こすことになります。
「痩せている自分こそ価値がある」と考える一方で「太っている自分には価値はない」というような極端な思考に陥いることもあります。
この思考には、自己肯定感の低さや体重は少ないほど良いという偏った考えが根底にあると考えられています。

痩せる事に喜びや、自分らしさ(=アイデンティティ)を感じてしまうと、今度は太る事に過度な恐怖や不安、ストレスを感じてしまうのが怖いところやね。
拒食症の場合は、明らかに痩せ細っているのに本人は「私は全然痩せていない、むしろ太っている!」と、現実の自分の体を正しく認識できていない(ボディイメージの歪み)というのが特徴やね。
おまけに、痩せる前より行動的になる場合もあるから、摂食障害に疎い人やと「痩せて体の動きが良くなってるみたいや」「前より練習頑張っとるねぇ!」と疑問を持たずにスルーしやすいんや。
そうこうしとるうちに摂食障害が進んで、日常生活にも影響が出ることもあるんや…怖いもんやねぇ。
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スポーツ現場で摂食障害が起きる背景。
体重減がパフォーマンスアップにつながるスポーツをしている
マラソンや陸上長距離、フィギュアスケートや新体操、スキージャンプのように体重を減らして身軽になることで、パフォーマンスの向上が見込めるスポーツでは、体重を減らすために激しい運動や食事制限を行うことがあります。
しかし、普段からカロリー不足なので厳しい空腹感やストレスに苦しめられるのは言うまでもありせん。
もちろん空腹感に我慢できず、タガが外れたようにドカ食いしてしまっては、せっかくのダイエットが水の泡になってしまいます。
こんな場面で「食べてもいいけど吐いてチャラ」という考え方を学んで実践すると、一時的に精神的な安定を得てしまい、その場しのぎでも何とか体を絞って大会に間に合わせるといったことが行われてしまいます。
当然このやり方は体に負担がかかるので、1度うまくいったからと言ってその方法が2度も3度も…連続して成功する保障はありませんし、うまくいかなかった場合の健康への犠牲が非常に大きいので、決して推奨できる指導と呼べません。
また、「体重を減らさなければいけない」という考えは「食べることは悪」と考える事につながります。
しかし、食べることは生命維持のために欠かせない行為なので、我慢できずつい食べてしまって、「やばいダメなのに食べてしまった…」という罪悪感を抱かせてしまいます。
食べることを悪と感じ、食べたしまったら罪悪感を感じるという状態では、スポーツをしていくうえで大切な栄養の知識や食育がおろそかになってしまうのは言うまでもありません。

体力付けるために「たくさん食べなきゃいけない!」という思考に「記録や大会のためにも、太る(体重増)のは絶対ダメ」という思考がぶつかって、精神的に板挟みの状態に陥ってしまうと、過食と嘔吐という悪魔的な組み合わせが生まれてしまうんや。
「ちゃんと食べてへんと顧問から怒られる…それは嫌や…」
→「でも体重が増えてしまうのは絶対NG!」
→「せやったら、顧問の前では一応食べておいて、食事が終わったらトイレで全部吐けばええやん!」
→「体重も増えず、顧問に怒られずに済んでwin-win!」
…っちゅう思考回路ができてしまうんやね。(※この思考回路は一例)
こんなん、長い目で見たら全然win-winやないんやけどねぇ…。
ストレスを抱え込みやすい性格である
摂食障害の原因の一つに性格があります。摂食障害になりやすい性格は、ストレスを抱え込みやすい性格と言われています。
例えば、まじめで努力家、我慢強くて地道な練習をコツコツ続ける事ができる性格の人は、普段から理不尽やストレスにじっと耐えてしまうという欠点もあります。人間は無限にストレス耐えることはできないのに、耐え続けようとすれば体や精神に過度なストレスによる不調が出てしまいます
また、まじめすぎて完璧主義な性格や「困ったときに誰かを頼れない」「相談したら相手に迷惑かけてしまう…」と感じやすい人も、ストレスを抱え込んでしまいやすい性格の一つです。
いわゆる、先生や親の言うことをよく聞くいい子ほど、ストレスを抱え込みやすく、抱えたストレスが食事に対する異常な考えや行動になって現れてしまうことがあります。

陸上の自己ベストみたいに体重って数字ではっきりわかるから、目に見えて減ってくと満足感や達成感が手に入りやすいのが特徴的やね。
スポーツによっては、まじめでコツコツ努力ができるタイプが向いているスポーツがあるのも事実。
傍から見れば、地味、きつい、面白さがわからないイメージで語られる、陸上長距離やマラソンなんかはその最たる例として挙げられやすいね(汗)

…もちろん、まじめで努力家なのは悪いことちゃう。
せやけど、そのまじめさが災いするパターンもあるって事を知っておけば、精神的にちょっとは楽になれるかもしれへんね。
間違った知識で指導している。
摂食障害に関する知識が乏しいゆえに間違った知識や逆効果になる方法で、食べる事に関する指導をしているというケースもあります。
例えば、「体重がこれ以上増えないように、食べたら吐く」というような指導法。
食べたもの吐き出せば、もちろん食べたものの重さが減るので、体重は元に戻ります。しかし、嘔吐することで結局体は食べ物の栄養を吸収することができず、栄養不足・空腹状態のままです。

体育会系でよくある「飲み会でお酒を飲みすぎたら吐けばいい!」みたいな軽いノリで、「食べ過ぎで体重が増えたら吐けばいい!」みたいな軽率なアドバイスで体重を減らそうとさせるのはホンマにアホの極みやで(怒)。
吐いて今まで食べたもんを出したら、その分体重…というか食べたもんの重さが、吐き出されて減ってるだけに過ぎひん。(これは汗や排泄物にも言えるね…)
もちろん、一度食べたものを吐くのは心身ともに負担がかかるし、胃液(胃酸)が喉や食道を逆流して粘膜が傷ついてしまう。
陸上長距離やマラソンのように呼吸で喉を酷使するスポーツやったら、こんなこと繰り返して喉を傷つけたらアカンで…ホンマに。
根本的な摂食障害の知識や女子スポーツ選手の悩みに疎い
摂食障害のような女性に多いメンタルの病気や、女子スポーツ選手に多い悩みに疎く、いつまでも自分のやり方にこだわっている、女子スポーツ選手のメンタルについて知ろうとしないと、摂食障害が起きても適切な対応(カウンセリング、通院など)を遅らせる原因になります。
また、根本的な摂食障害の知識を知らないと、「あれだけ体を絞って頑張っているんだから、あの選手にはぜひとも今度の大会に出させて上位を狙わせてやりたい」という、指導者やチームメイトなら自然に抱く応援したいという気持ちにより、摂食障害そのものが見過ごされてしまいます。
文字通り身を削って頑張っている選手の健康を案じるのではなく、ビジネスライクな指導者ではなく人間味あふれる一指導者・チームメイトとして、何としてでも頑張りを無駄にしたくない、応援してやりたいという考えが出るのは自然な事です。
また、指導者が教育者という側面も併せ持っていることから、選手自身が文字通り自己犠牲で体を削っている状態を、素晴らしい、頑張っていると評価してしまいます。
健康を損ねるまで体重を減らすのを評価してしまうと、結果として体重を減らす行動をエスカレートさせてしまい、選手生命も削ってしまう事につながりかねません。

摂食障害になる女性アスリートの存在が認知されるようになったとはいえ、男の指導者で摂食障害について疎い人はまだまだいる。
また、いくら指導すると言っても、やっぱり男(指導者)と女(選手)の関係やさかい、どうしても心理的な事や体の悩みとかで、男の理解や想像が及ばない事もある。年頃の女の子にどう接したらいいかわからない指導者ってのもいるからねぇ…。
男やからこそ女に多い悩みや病気に気づけない、無頓着のまま摂食障害が進行するような指導している事も考えられるんやで。
(※もちろん、女の指導者でも同じ事は言える…一応補足な)

男のわりに何かと女性特有の病気やメンタルヘルス、悩みに詳しいって事を
選手に対してちゃんとアピールしていくのは、なかなか抵抗があるような気も…

女子選手に対してこういう話題を言うと、「セクハラと勘違いされるんちゃうか?」って感じている人も結構いるような気もしまっせ。
まぁ、詩織コーチみたいにセクハラ恐れずきっぱり言える人なんて滅多におらへんと思いますけど。
摂食障害の人が身近にいるときに出来ること
摂食障害は他人に悟られないようにする事が多い
摂食障害の人は、自分が摂食障害であることを周囲に知られないように隠す、摂食障害である事を伝えても否定する事がよくあります。
過食嘔吐のように食事を無駄にする事は、一般的に褒められる行動ではなく自分から打ち明けることはできないという心理もありますし、心のどこかで恥ずかしいことをしている、人には言えないことをやっているという自覚をしているので、隠したがるものだと考えられています。
とくに、スポーツ選手や体育会系の場合、メンタルの病気と縁が無いと考える人が多いため、自分がメンタルを病んでることを悟られたくないと思う心理も働いてると考がえられています。

脳筋とか鋼のメンタルと相性がいい体育会系の雰囲気やと、「メンタルが弱い=自分の評価を下げる」って考えてしまうのは無理あらへんね…

「ストレスや理不尽に耐えてこそ体育会系!」ってノリやったら、メンタルが弱いことは悪になっちゃいますよね…

人間の価値ってさ、メンタルの強さが全てやないと思いまっせ…。
「助けになりたい」という気持ちを伝えるようにしていく
摂食障害になった大切な人を助けたい場合は、批判的にならず自分は味方ということ、助けになりたいという事が伝わるようなコミュニケーションをしていくようにして、安心してもらえる事を心がけましょう。
例えば、直接「あんたは病気やから、ちゃんと食べなさい!」と上から強く言うのではなく、「最近ちょっと痩せて元気がなさそうやけど、具合悪いの?」というように、そっと寄り添う感じで、優しく接していくようにすれば、安心感を生み出せるようになります。
また、摂食障害になった部員を自分一人でなんとか助けようとして困ったときは、顧問やコーチに相談する、保健の先生やカウンセラーなどの周囲の人に相談して、本人に治療の必要がある事を伝えていくという方法もあります。
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あとがき

摂食障害に限った事やないけどホンマの友達やったら嫌われるかもしれへんけど、相手にとってプラスになる事は伝えていく、伝わるように工夫するのは大事やね。
ふざけあったり馴れ合う仲もええけど、必要な時は真剣になれる関係を目指したいもんやな。

喧嘩するほど仲がいいって、スポ根漫画やドラマではよくありますよね。

そういや二人って、喧嘩するぐらい言い合うことあんの?

う~ん、そこまで言い合う事ないかなぁ…。

え?割とあるような気がするで?

それ乙女が喧嘩やと思い込んどるだけちゃうの?

そんな事ないやろ!
美幸こそ最近言い過ぎとる事あったやろ?

…ちょい、お二人さん…
その…なんかごめん。こんな質問した私が悪かった。

ホンマそのとおりですよ。

コーチ、よ~わかってはりますやん!

(…やっぱ仲ええやろあんたら!)
イラスト・ストーリー : シロカネ