
[su_box title=”簡単なキャラクター紹介” box_color=”#2fa39f”]

乙女ちゃん。走ることが大好きな陸上長距離専攻の高校1年生ランナー。
一定ペースで走るのは苦手でビルドアップ走のような後半追い上げる練習が好みらしい

美幸ちゃん。乙女ちゃんと同級生の初心者ランナー。
ペース走は得意な部類だが、あまり刺激が得られないらしく好きかどうかはまた別の話らしい。

乙女ちゃんと美幸ちゃんを指導するコーチ(大学4年生)。
ペース走を指導するときは進んでペースメーカー役を買って、ちゃっかり自分の練習もしているとか。
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あらすじ
前回の新人戦から数日後。大会で1500Mの自己ベストを更新こそできた美幸であったが、個人的に1500Mだけでなく3000Mも走ってみたいという気持ちも芽生えているご様子。
練習前のミーティングで、コーチにその旨を伝えてみることに

新人戦から時間が空いとるけど
まだ足が痛いとか、まだ筋肉痛が残ってたりしとらんか?

私は大丈夫です!
ちゃんと超回復できるだけの期間があったので、万全のコンディションです!

一応私も大丈夫です。
昨日まではケツに筋肉痛が残ってましたけど、それもちゃんもと治りました。

美幸、ケツって言い方は流石にやめといたほうがええと思うよ…現役JKとして。

…乙女の言うとおりやね。
ケツやなくて、「大殿筋(だいでんきん)」って言おうな。(これで2度目やで)
(参考:「レペティショントレーニングって? 効果や初練習時のメニュー、コツを解説」より)
あと乙女。「JK」もあんまよそで言うたらあかんで…軽い女に見られるで。

あ~大殿筋ですよね~大殿筋!
もうしっかり覚えましたよ、コーチ!

ところで、コーチ!
この前の大会で感じたんですけど、私もそろそろ
1500Mやなくて3000Mもやってみたいなぁ…!て感じたんですけど。

いつか美幸には3000やってらんか?って言おう思ってたけど
まさか自分から言うてくるとはねぇ…。

え、美幸が3000M!いきなりすぎひん?

いややな~もう。
私かて、向上心ぐらいあるんやで!

へぇ~美幸もちゃんと成長しとるんやなぁ~

その言い方やと普段の私は全然してへんみたいに聞こえるで?

いや、そんなつもりやなくて、
後輩の成長する姿を見守る先輩の気持ちがわかったような気がしたんや。

同級生にそんな感想言われるのはじめてやで…。

向上心があるのはええことや。
ただ、1500Mと違って3000Mやと単純に走る距離は2倍になる。
当然勢いやスピードだけやなくて、自分にあったペース配分ができるようになるのが大事やね。

ペース配分ですか…。
まぁ、この前の1500Mの自己ベスト出したペースのまま3000M走っても
多分途中で失速するんは簡単に想像できちゃいますもんねぇ…。

ほなら、今日の練習は「ペース走」にしてみるか!

ペース走ってペースランのことですよね?

せやね。陸上長距離やとペース走でもペースランでもどっちでも通用するけど
どっちも一定ペースで走り続けてペース感覚や持久力を鍛える練習法や。

走り込みしやすい時期になったし今日は私も一緒に走ったるで!
せやけど、ペースを作るのは美幸自身!
私は美幸の後ろに引っ付いて走るから頑張るんやで!

コーチに何kmも背中を追われるハメになるんか…
なんか嫌やなぁ…。

お気の毒様やねぇ…頑張りや。

…自分から言ってとアレやけど
実際にこういうキツイ反応が返ってくるのは辛いなぁ…

(せやけど、冷静に考えれば何kmも誰かの後ろを追い回すのって
陸上長距離やマラソン以外やと確かに変質者のすることやからねぇ…。)
…ということで、今回は「ペース走(ペースラン)」について説明していきます。
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ペース走とは
ペース走はその名の通り、一定ペースで淡々と同じペースで走り続けることで、持久力や心肺機能、乳酸の処理能力の向上の効果が見込めるトレーニングの一つです。略して「ペーラン」「PR (Pace Run)」と言われる事もあります。
インターバルトレーニングやレペティショントレーニングのようにスピードを鍛える練習とは異なり、ある程度スピードを抑えてその分長い距離を走り続けるスタミナ寄りの練習です。
ただし、スピードは控えめとは言っても、普段の軽いジョギングのようなスピードではなくある程度のスピードを維持しないと、トレーニングの効果は見込めません。
ある程度のスピードは持続しつつ落とさないようにするよう走りましょう。

ここで言うの変ですけど、わたしあんまりペース走好きやないんです。
陸上長距離の練習の中でもやたら地味やし、スタミナ寄りの練習で面白味もあんまない気が…

スピードを上げて走るんが好きなランナーにとっては、ペース走は地味で苦行っぽく感じる事はあるかもねぇ…
せやけど、スピード練習で身に付いたスピードを持続できるようになるためには、ペース走は効果的な練習とも言える。

そう考えると、一見関連が見えないペース走とスピード練習の関連性がわかりやすくなりますね!

スピードもスタミナもバランスよく鍛えるとよりトレーニングの効果が高まる。
トレーニングの7原則で登場した「全面性の原則」がこういうところで理解できると、コーチとしても嬉しい限りや。
ペース走のやり方
ペースは心拍数を参考にする
ペース走のペースの決め方は、心拍数を目安にして以下の数式で決めるという方法があります。
(最高心拍数-安静時心拍数)×目標運動強度+安静時心拍数
- 最高心拍数 = 220-年齢
- 安静時心拍数 = 安静時の1分間の心拍数
- 目標運動強度 = スポーツのトレーニングなら70%(=0.7掛け)、ダイエット向けなら60%(0.6掛け)、健康維持向け50%(0.5掛け)
となります。
例:年齢15歳、安静時心拍数が60回の乙女ちゃんが目標運動強度70%でペース走する場合
最高心拍数=220-15=195(回/分)
(205-60)×0.7+60
=145×0.7+60
=161.5(回/分) …目標心拍数
走る距離について
ペース走はインターバルやレペティション同様に、走る距離を柔軟に変えることができるのが特徴的です。
ただし、練習の効果を高めるためには、ペース走は少なくとも20~30分程度は走り続けるようにしましょう。
初心者のうちはまずは5~10kmを基本に、ある程度実力が付いたら10km以上にしたり、距離はそのままでペースを早めて適切な負荷を与えられるように調整しましょう。
参考:ペース走用目標心拍数計算機
目標心拍数の算出方法の解説をしましたが、計算がややこしいと思いますので、こちらで年齢、安静時心拍数、目標運動強度を入力出れば計算できるツールを作りました。
ぜひ練習用にご活用ください。
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ちなみに心拍数をリアルタイムで確認するには心拍計付き腕時計(ハートレートモニター)を使うとわかりやすい。
…とはいえ、心拍計付き腕時計はウン万円するのはザラやし、なかなか買いにくいよねぇ……
心拍計付き腕時計が無い場合はランニングをやめてすぐに20秒間脈拍を計測、その値に3をかけて1分間あたりの心拍数を調べるというアナログな手法でもOK。
(一応20秒の値も計算機では出るようにしといたで)

上の例なら、目標心拍数が161.5(回/分)の私の場合、走るのを止めた直後の20秒間で53~54回ぐらい心拍数になるペースで走り続けるのが目安というわけですね。
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ペース走時の注意点
平坦な周回コース、途中で距離が確認できるコースがオススメ
ペース走は一定ペースで走るトレーニングのために、距離表示のある場所や周回コース、陸上競技のトラックを使ってやると、1kmごとのラップタイムがよくわかるので適切なペースが守りやすくなります。
また、坂道やカーブが多い道だとペースが乱れる原因になるので、できるだけ平坦なコースで行うようにするのがおすすめのです。

心拍計を買わなくとも、ラップタイムが分かるランニングウォッチがあるとペース走は捗るね。
最近はiphoneやipadでもラップ機能付きタイマーアプリが無料で使えるけど、実際の練習での使いやすさ、確認のしやすさはラニングウォッチの方が上やね。
ジムのトレッドミル(ランニングマシーン)でもOK
周囲に距離表示のある場所がない、雨や雪などでなかなか外で走る練習ができない場合は、スポーツジムにあるトレッドミル(ランニングマシーン)を使ってペース走をするという方法もあります。
トレッドミルの場合、自分の体調に関係なく一定や傾斜をつけたままの状態で、天候関係なく長時間走ることができるというのが魅力です。
ただし、実際に地面の上を走るのと、トレッドミルの上を走るのとでは着地の感覚やペース感覚が異なり、トレッドミルの上で走りすぎた結果、大会で思ったようなペースが出にくくなるという事もあります。

心拍数や負荷を一定に保てるトレーニングなら、トレッドミルやなくてエアロバイクでもOKやね。
故障で走れない場合は、心肺機能が落ちない用にエアロバイクをするランナーもよくいるね。
誰かのペースに合わせるのではなく自分にあったペースで行う
トレーニングの7原則の「個別性の原則」にあるように、ペース走のペースや距離は自分の今の実力にあったものにしなければいけません。
自分の実力以上のペース(距離)の場合、途中でペースダウンやリタイアをしてしまい、思ったような練習の効果が期待できません。
逆に、自分の実力以下のペース(距離)の場合、簡単に達成できるので負荷が軽すぎず、こちらも思ったような練習の効果が期待できません。
もしも部活の全体練習でペース走を行う場合は、なるべく自分の自己ベストのタイムに近い人同士でタイムを合わせて走るようにしましょう。

ペース走でどれだけ走るかを1回でビシッと決める必要はない。
何回かやった中で「この距離とペースやったら頑張れば走りきれそう…」というラインを時間をかけて調べてみるとええね。
頻度は週に1~3回程度が目安
ペース走は負荷の高い練習なので、毎日やれば故障やオーバートレーニングの原因になります。
スピード練習同様に、次の日は軽いjogにして休息を入れること。目安は中2日~3日にして、多くても週に3回程度にとどめておくよくにしましょう。

初心者のうちは週に1回でも、ちゃんと自分にあったレベルでやってるのならそれでOK。
トレーニングの7原則「継続性の原則」のように、なるべく数ヶ月~1年のように長期目線で見てトレーニングが継続できるように距離やペースを調整するんやで。
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あとがき

なんやかんやで10kmもコーチに背中を追いかけ回された…
なんかまだ背後にコーチがいる妙な感覚がする…。

ちゃんと設定通りのペースで走れてたから上出来やね。
てっきり私から逃げるために、無理にでもペース上げるんかなぁ…って思ってたけど、ちゃんとペース守れてたんは良かったで。

練習終わって感じましたけど、大会でも誰かについていくんやなくて
自分が先頭集団を引っ張る場面もそのうち出てくるかもしれへんし
今のうちから誰かに追われる経験もしといて損はないと思います。

せやね。
今はまだ初心者で高校1年やから、大会やと集団の先頭を走るよりも
集団についていくので必死なんはよくあることやから、それに収穫あっただけでも大成功や。

もちろん実力がついてきたら、いつかは自分が集団を引っ張る立場になる場面も出てくる。
その時のための練習やと思えば、私に追いかけられたのもムダではないっちゅうわけや。

コーチみたいに後ろにいるだけでプレッシャーのある人に追いかけられたら
なんかメンタル面も妙に鍛えられた気はしますね。

プレッシャーかぁ…
そういうのが武器になるランナーってなんか羨ましいなぁ…。

コーチ!どうやったらプレッシャーって身に付くんですか?

ストレートな質問やなぁ…それはそうと、プレッシャーねぇ…
陸上長距離はサッカーやラグビーみたいに体がぶつかる場面は限られてるから、使い所は少ないけど…。
しいて言うなら、私は「姿勢」がポイントやと思うね。

いい姿勢を心がけることですか?

ランニングはエネルギーの無駄が少ないフォームで走るのが重要なのはよく言わとるよね。
わかりやすい例やと、下を向いて猫背になるよりも、胸を張って前を向くフォームの方が
効率的に地面からの推進力を活かしやすいってスポーツ科学の分野では言われとる。

あとは、メンタル面でも猫背になるよりも胸を張って姿勢を正したほう、自信が出て前向きなメンタルになりやすい。
姿勢がよくて自信満々なランナーが周囲にいると、「なんとなくすごそう!」って感じるの事は結構ある。
あと、悪い姿勢を続けていると腰痛や頭痛の原因にもなるんや。胸を張って生活することは健康面でも大事なんやで。

なるほど、胸を張ることが大切というわけか。

胸を張るのに胸の大小は関係ないからねぇ…私もやってみよ。

…あんたもしっかり走り込んだら
そのうち胸の脂肪も燃焼するから私と同じみたいになるで。

いやいや、乙女とは小学校からの付き合いやけど
ずっと胸の大きさ変わってへんやん!
流石に痩せても乙女みたいにはならへんやろ!

あんたら、胸の大小で言い争うのはよさんか!

…一応言っとくけど、胸の膨らみはだいたい体脂肪。
走って脂肪が燃焼したら、胸の脂肪も一緒に燃焼されるし、胸が萎むのは自然の摂理や。
本格的に陸上長距離やマラソンをしとると、体脂肪(胸)が減るのはしゃーない。

でも、乙女って小学校の頃からずっとスレンダーなんやろ?
せやったら、それは生まれつき陸上長距離向きの体しとるとも言えるから
それはそれで評価できると私は思うで。

…こんな形で胸が無いことを褒められるのは、なんか複雑やなぁ。

でも、コーチに褒められたから、ちょっと胸を張って行けそうな気がします!

その意気やね。
大事なのは胸の大小なんかやない
胸を張っていい姿勢を心がけることや!このことを胸に刻んでおくんやで。

(「うまいこと言ったつもりですか!」ってツッコもう思ったけど、
このセリフは胸の奥にしまっとこ…)

(コーチって、ボケるときは本当に胸踊ってそうな表情しはるなぁ…)
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試合・大会前の調整 ピーキングと大会に向けてのコンディションの整え方について
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参考書籍
イラスト・ストーリー : シロカネ